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2011年 04月 26日

アレクセイと泉

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ポレポレ東中野で「特集上映 25年目のチェルノブイリ」をやってるっていうので見に行ってきた。
見た作品が、この「アレクセイと泉」というドキュメンタリー。今の自分には字幕読むのは一仕事だけど、そんなんじゃなくてね。当日の朝知って、行かなきゃ行けないと思った。

公式サイトよりあらすじ。
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舞台となる〈泉〉は、1986年4月26日に起こったチェルノブイリ原発(旧ソ連・現ウクライナ共和国)の爆発事故で被災した、
ベラルーシ共和国東南部にある小さな村ブジシチェにある。
この村の学校跡からも、畑からも、森からも、採集されるキノコからも放射能が検出されるが、
不思議なことに、この〈泉〉からは検出されない。
「なぜって?それは百年前の水だからさ」と、村人たちは自慢そうに答える。

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映画の中の村はとても小さくて、アレクセイだけが34歳で最年少。みんな年寄りばかりが残り、週に2回来るバスでたまに「町」と人の往来がある。放射能が検出される中で、静かに日常を送る人々。夏にはジャガイモを収穫し、小麦を収穫し、冬にはまき割りや籠をつくる。村の泉には新しく囲いが作られた。アレクセイ以外の人間には残り時間が少なくなってきていることが物悲しい。2002年の作品だから、チェルノブイリの事故からは15年はたっているというのに、今でも「避難勧告地区」には変わりない。でも、彼らは住み続ける。

映画でアレクセイは言う。
「村で生まれた者は、たとえ町に出て行っても
いつも村に心を寄せている。

運命からも、自分からも、どこにも逃げられない。
だから僕はここに残った。」


私の実家は、今回の東日本大震災で被害を受けた原発から50km圏内に位置している。
もともと割と大きな都市とは言え、すでに田舎なので若者は大半が出て行き、ハローワークは混雑していると聞く。私とて東京で職を得、仲の良い友人たちは県外にいる。

そして、3.11。

私はそのとき東京にいたけれど、前日まで実家にいた。東京でもその日は非日常だった。実家ではどうだったのか、予想もつかない。

その後一度戻ったけれど、またすぐ東京に帰ってきた。もう東京では、気づくと日常が日常になっている。でも故郷のことをまったく忘れる瞬間はいまだ訪れはしない。

このあと、少し滞在するつもりで帰省する。

家族はあまり私に心配をかけるようなことは言わない。けど、3/15に仙台と実家に手紙を出したのに、3/18には仙台に着き、実家には3/28に着いた。「被爆者」じゃなくて「普通の」緊急患者の輸送を断られた県もあったそうだ。「悪質なチェーンメール」とやらは私は見ていないのでなんともいえないが、火のないところに煙は立たないんじゃないかとも思う。

実家に帰ったときは、脱いだ上着と帽子を玄関で脱いで家に入った。そのときは一日しかいなかったけど、静かな静かな「被災地」だった。

知り合い
は彼なりに頑張っているし、応援しているし、同期の市職員からは彼なりの目線の情報を教えてくれる。twitterでもわかるものを追う。ただし、情報は圧倒的に少ないし、偏る。

地震の被災地であって、津波の被災地であって(実家は幸い被害を免れたが)、原発の被災地であって、でも家族はそこにいる。

でも原発自体全部が反対なわけじゃなくて、人間の歴史において生み出されたエネルギー効率のよい素晴らしい科学のひとつだと思う。とはいっても、言葉は悪いけど、自分のケツを自分で拭けるようになったら一人前だ。原発はまだ一人前じゃないだろう?

映画館を出るときに、監督と少しだけ話ができた。「本当は君みたいに、被災者にみてほしい」と言う。まだそんな機会ではなくて、時期を見てとのことなんだろうけれど。映画を見ているときも、監督と話すときも、つい涙が我慢できなかった。

あの美しい空や、海や、緑や、山々の連なりが壊されるのはとても辛い。けど見えないものに汚されていくのはもっと怖ろしくて、わからないものにおびえて暮らすのは気が狂ってしまうんじゃないかと、勝手に辛くなる。
映画の中で暮らす人々、いまも実家の町で暮らす人々。なんて力強いんだろうと思う。

「チェルノブイリ」をテーマにした映画祭はずっとポレポレで続けてきたそうだが、今年は意味合いが変ってしまった、と言っていた。私が見た回も立ち見だった。「アレクセイと泉」の静謐さに込められた悲しみが未だに身体から出て行かない。

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ポレポレ東中野 公式サイト
『特集上映 25年目のチェルノブイリ』

東京都中野区東中野4-4-1 ポレポレ坐ビル地下
TEL 03-3371-0088/FAX 03-3362-0083
e-mail pole2@co.email.ne.jp

※JR東中野駅西口北側出口より徒歩1分・駅ホーム北側正面
 または地下鉄大江戸線A1出口より徒歩1分

2011/4/23 - 5/6
14:20/16:40/19:00
詳しい上映スケジュールはこちら
※入れ替え制 一般1400円/大・専1200円/中・高・シニア1000円
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チェルノブイリ原子力発電所事故  Wikipediaより
「アレクセイと泉」ふたたび 撮影にも立ち合われた高橋靖子さんの公式ブログ





ご無沙汰にはいろいろ理由があるんだけど、おいおい少しずつやっていきます。
いままでのも、これからのも。まだよろしくね。

3.11で人生が変った人間がここにも一人増えただけのことだ。

by kyuuuu | 2011-04-26 21:51 | Question of the day


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